コンタレックス I

これがツァイスか…
 コンタレックスは非常に詳しい方が多いので、私なんぞはあまり説明できません。京セラ製コンタックスを愛用していた私は、いつしかそのカメラの先祖ともいうべきコンタレックスに触れてみたくなり、やっとの思いで手に入れた一台です。コンタレックスといってもいくつも種類がありますが、そのなかで最初期モデルのコンタレックス Iを選んだ理由は単純、そのアクの強いルックスに惚れたからです。ブルズアイもしくはサイクロプスという愛称で呼ばれるように、このモデルの特徴はペンタ部前面に設置された丸窓のセレン露出計受光部のデザインにあります。このエグさにやられました。故にどんなに性能は進化しても、その後のコンタレックスではだめだったのです。見た目だけの勝利ですが、こればかりは好き嫌いの問題だからしかたがないのです。
 ツァイス社は第二次大戦後東西ドイツに分断されてしまいます。戦前から進められていた1眼レフ構想は東側にて先に実現しました。そして、遅れて'50年代中頃になって西ドイツのツァイス・イコン社がやっと出した一眼レフはレンズシャッター機のコンタフレックスでした。しかし、当時は日本製の一眼レフが猛烈な勢いで市場を席巻していた時で、それはフォーカルプレーンシャッター機だったのです。これに負けじと満を持して登場させたのがこのフォーカルプレーン一眼レフ、コンタレックスでした。悲しいことにそれでも最終的には商売で負けてしまうんですが、これはカメラ技術の先駆者ドイツが最後に放った日本へのカウンターパンチみたいなもので、さすがの意地の結晶ともいうべき高級感に満ちあふれています。値段もすごかったとか。その高級感がいまだに輝きを失っていないのは、用意された当時最高レベルの交換レンズ群と実性能の高さにより、現代のどのカメラにも負けないすばらしい描写力と、重厚な使い心地にあると思います。

ボディ
 約1kgの重量級ボディと、ショックが大変少ない独自のミラー機構により、うそみたいに手ぶれに強いカメラです。これで手振れが頻発する人は失礼ながら操作に問題があると思います。しかも、シャッターレリーズボタンが絶妙なストロークと力加減で、意図した位置の寸前で突然切れるので、力で手が震える直前に撮れる。これが良いみたいです。実はシャッターレリーズボタンは切れる瞬間が固いので実際の押す力はかなり重めですが、切れるストローク位置がちょうど良いところにあり、慎重に力を加え始めて押し込んでいくと、絶妙な深さで急に拍子抜けのごとくスカッと切れる感じです。 ゆえに人差し指の先で押すものではなく、第一関節寄りで押すべきかなと思います。
 シャッターはゴム引き布幕横走りなので、切れ味もソフトな感じです。アップダウンを完全メカニカル制御するミラー機構とあいまって、カパンッといったミョーなレリーズ音を金属ボディで大反響させてしまうところがご愛敬。この堂々たる風貌でシャキーッといったかっこいい音だったらちょっとミスマッチかもしれない。
 巻き上げレバーはシャッターレリーズボタンとシャッター速度ダイヤルと同軸でエキゾチックなデザインです。短くて一見操作しにくそうですが、ドイツの最高級機のイメージ通り重いながらなめらかです。巻き上げに限らず全ての操作は重めで厳かな気分にさせられます。しかもレンズのヘリコイドもしっとりと重くてグリス感を楽しめるものですから、写真1枚を撮るまでの行為がじっくり味わえる希少なカメラです。
 ひとつ不思議なことに、あの特徴あるセレン露出計がほとんどハズレないんです。これは不気味です。状況により本当に苦手な場面もごくたまにはありますが、最低限ネガさえ使っていればスナップ派として不満がない仕上がりを見せますし、通常はポジでも何とかなります。この露出計の一つ目玉は、その中身に立派なミニ絞りがついていてレンズのそれと連動している懲り様です。これは一種のTTLっぽい発想で、レンズの鏡胴に近い条件を見立てて円筒形にしているのでしょう。受光部の丸窓にはさらに小さな半透明の丸窓が集まっていて複眼的な造りとなっています。ひとつひとつの丸窓がわずかながら長さをもっており、正面から直入してくる光のみを専ら通過させる構造です。さらにそのうち中央部に3つだけ透明度の高い丸窓が並んでおり、これはちょうど、中央部重点測光に近い効果を狙っているようです。ただのセレンではないわけです。ちなみに専門家によると、セレンを長持ちさせるには、使用しないときに光に当てないことだそうです。このカメラはハードな革製速写ケースに入れてますので、その点で長年の保管条件が良かったのか、いまだに元気なセレンなのがうれしいです。

操作
 まずフィルム装填には、底部左右のつまみを回して裏蓋を取り外します。裏蓋というより大胆にボディ外装を外して行います。モルト不要の構造なのですが、今の時代よりかえって優れた設計だと思います。巻き上げレバー同軸のシャッター速度ダイヤル部にあるフィルム感度アジャスターを合わせ、その上部のアナログ式フィルムカウンターをセットします。被写体を決めたら、自動絞りではないので絞り解放で先にピントを合わせておきます。絞るとファインダーがどんどん暗くなり、スプリットがカゲって見えなくなりますからね。さすがにツァイスなんだから絞りによるピントのずれは非常に少ないレンズなのだろうと私は思って使っています。調べたことないですけどね。絞りダイヤルは正面向かって左前面にあり、右手中指または人差し指で回す位置です。結構重いダイヤルでギザギザで指が痛くなりますが我慢します。露出計の表示はファインダー内右側部に大きく表示されますが、軍艦部正面向かって右上部にもメーターがあります。共に指針タイプで実に見やすいものです。フィルム巻き戻しは、底部のつまみの一方にRという表示があるので、つまみの角度をそこに合わせると巻き戻し可能になります。軍艦部の巻き戻しレバーで普通に巻き戻します。

レンズ
 コンタレックスのレンズは旧西ドイツのカール・ツァイス・ブランドです。ちょっと前までなじみ深かった京セラのコンタックス用レンズも初期には西ドイツ生産のレンズがありました。コンタレックスはそれらのちょうど一世代前にあたる製品で、技術的にも古すぎず、コストも高くかけられ、ある意味でピーク期にあった頃のレンズと言って良いでしょう。すべてが最高のガラスで造られ、高精度のアルミ合金の鏡胴に納められています。見ただけでなんか贅沢です。コンタレックス独特の本体との絞り連動機構のため、非常に小さなベアリングが仕込まれ、揺するとちりちりと音がするのが特徴です。どのレンズもフォーカシングの際に回すヘリコイドリングのしっとりとした抵抗感は感動的ですらあります。光学設計的には現在のツァイスブランド名のレンズもこの頃のレンズと大きくは変わっていないと思います。むしろ現代の製品よりずっと最短距離が短いのは驚きです。さらに、こと描写力に至っては、ものによっては京セラコンタックス用よりかえってコンタレックス用のほうが好みだったりします。いつも思っていたより良い写真が出来てくるのでなんだか狐に夢でも見せられているような気分になるレンズです。 これは本当はレンズのせいだけでなく、先述のボディの手ぶれしにくさなども要因なのでしょう。
 今やコンタレックス用のレンズの中古相場は非常に高価です。私はまだたった3本しか入手できておりませんし、今後も多くを揃えられそうにありません…。

プラナー50ミリF2
ゾナー85ミリF2
ゾナー135ミリF2.8

    

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