STUART SPECTOR DESIGN NS-5

いきさつは?
 94年製95年入手。壁掛け展示ですばらしい照明により、とーてっも美しいベースでした。当時私はバブル期の独身サラリーマン時代。カード一括払いにより衝動買い。ところがこの時はトラスロッドが初期不良だったとは知る由もない!!やがてS字反りがひどくてロッドが効かないとわかり保証修理。色々な意味で運命的なベースでした。

どんなベース?
 スチュアート・スペクター氏によるハンドメイド。90年代初期から出始めた5弦モデルです。当時はSSDという社名の製品で、現在はSpectorブランドが復活しているので存在しないブランドです。スペクター氏自身のハンドメイドといっても、ハイクオリティすれすれの人間くさい適当さがありうるのが怖い。特にネック構造はデンジャラスな製品。本当はNS-2Jというボルトオンネックモデルが後でリペアしやすく安心かも(でも見た目はちょっとね)。それはそうと、このスペクター・ベースというのはなんと有機的でかつ芸術的な造形であることか!にこの点に異論を唱える人はいないでしょう。人類史上最高にアートな生き物ベースです。

 以前のNS-2で一世風靡した頃はナチュラルフィニッシュが多めだったスペクターですが、SSD時代はグロウ塗装を多用しゴージャスなイメージを打ち出していました。この配色は、トランスルーセントブルー、というかほとんど紺ですね。よーく見るとトップ材であるキルテッドメイプルの木目が拝めます。裏面も然りですが、人間工学的にアーチドバックに仕上げられていますので、アメリカ人の出た腹にもフィット。スルーネックなので、ボディ中心を3Pハードメイプル材が貫いています。ヘッド側のナットは真鍮製でここでの弦高が高めなのが特徴的です。このため全体的にも低い弦高にするのは難しいです。ただ、高い弦高とスルーネック構造との相性は良いのでしょう。小さなボディでもベースになるのはこのせいかな。これにお得意のEMGアクティヴピックアップが付きます。18v仕様なのでM-92と似ているのかなと思いきや、下記の通り独自のサウンドを持っています。弦間ピッチは17mmとやや狭め。ピックの人はちょうど良いくらいで、スラッパーには狭いです。でもがんばるしかない。私はフラットな指板の場合の弦間は19mmが理想ですが、スペクターの指板のRは丸めなので2フィンガー的には17mmでもそれほど難しくないです。

サウンドは?
 スペクターといえばド派手なサウンドと言い伝えられていますが、私のNS-5はなんか違います。落ち着きが感じられる。他のNS-5とも違うんじゃないかなぁ。ダグ・ウィンビッシュ(リビングカラー)のものに似ているのであんな音だと思ったら大間違い。我がNS-5のサウンドはタイトでダークです。個体差なのでしょうかね。

 具体的には、トーンをいじらない状態だと硬いローだけで鳴っていて、すでにコンプで圧縮されたようなサウンドといえばわかりやすいでしょうか。より低いローエンドは案外ふくよかなのですが、ローミッドは重苦しく、ハイミッド〜ハイは引き締まって静かで、ハイエンドは繊細でぶりりあんと!究極のドンシャリ。言い換えれば、ハイエンド以外は良い倍音が響いていない感じです。その倍音も弦だけから鳴っていて、硬く重く締まりまくったボディはさほど鳴っていません。加えて弦テンションも緩めですしね。でもあまり太いゲージはネック強度的に張りたくないのでこれ以上のテンションアップは避けたいもの。これでデカ音バンドで2フィンガーで鳴らすと全く聞こえないんだ!もちろん、見た目に惚れて買ったので気にしちゃいけません。処置としてはBASSノブをフルテンにすればかなり気持ち良い音色になります。ローがよりファットになるついでに少しローミッドが持ち上がるのでしょう。これはアンプを選びますね。

 と、ここまで書くとロクでもない印象になりましょう。しかし、エフェクター乗りは非常に良いんです。歪み系などは最高に相性良く、良いオーバードライブorディストーションと組み合わせればミッドをドライブされた倍音が埋めて非常にかっこいいロック向きなサウンドに変身します。また、多くのスペクター奏者が好むピック弾きも同様の理由でかっこよくなります。ピックにはミッドの倍音を発生させますね、それが最高の相性で、独自のスペクターサウンドが完成します。この使い方がベストでしょうね。

 さて、ロック向きにと書いたばかりですが、スペクターをファンク系に使っている人はどれだけいるのでしょう。上記の音色はスイートなソウルバラードやブラコンには案外ハマるものです。私はファンキーな2フィンガーを信条としておりますが、緩テンのおかげで非常に弾きやすいです。弦間ピッチが狭いせいで指の腹まで深く引掛けると隣の弦に当たりそうになりますので、指先だけでヒットしています。これで充分に弦が振動します。フェンダーじゃ絶対考えられない奏法です。鳴りっこない。
 一方、スラップサウンドはライトながら案外いけます。低音はベースをフルテンにする必要がありますが、ハイミッドが少ないので、良く言えば既にTCTでミッドカットしたようなサウンドです。高音弦のビンとした倍音が気持ち良いです。プルの音色はギッという控えめなもの。

後日談
 ある日、私はいろんなベースを持って登場しているにもかかわらず、バンドメンバーに「おまえってスペクタ〜ってイメージだよね」と言われて、あぁどんなに良いベースが他にあってもスペクターだけは一生愛していこうと誓いました。

追伸 13年11月吉日、お嫁に行きました。お幸せに。

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