Fodera Emperor 5 Bolton

ルックスはあきらめるから安くフォデラサウンドが欲しい

 95年オーダーして96年春に届いたオーダー品です。一生物の本妻が欲しくて、70年頃の白いフェンダージャズベース(往年のヴァーダイン・ホワイトのイメージ。またかい…)を探していたのですが、残念ながら値段が高い割に状態の良い物に出会えませんでした。それなら最新技術で作ったほうがあらゆる意味で永く付き合えるのではないかと思い立ちました。クオリティとサウンド両面において現在世界最高のベースといわれる、あこがれのフォデラでとどめを刺したらどうかと。当時、フォデラはボルトオンネックでダンカン製ピックアップによるパッシヴのベースをリリースしたばかりで、まさにオールドフェンダーをイメージしたようなモデルが登場した時期でした。タイミングは良かったわけです。
 同社のベースは通常、豪華な木目のエキゾチックウッド仕様が有名で、おかげで値段も世界最高級となります。しかし、高価すぎるベースは身分不相応ですし、予算もない。しかも、その装飾的な銘木が音に影響を及ぼす要素はさして大きくないだろうと思いました。ヴィンテージのジャズベースはアルダーかアッシュのボディでしょ?そこで私は高価な木材を奢らないオーダー案を考えました。メイプルネック&ローズウッド指板をアッシュかアルダーのボディにボルトオン、パッシヴで勝負、という仕様にしたら割安でフォデラ・サウンドが手に入るのではないかと思ったのです。木目はどうでも良いという人はふつうフォデラを買わないのですけどね。せこい。でも、なんとこの思惑は正解で、フォデラにしては安い価格(でも妻には言えぬ値段だ…)で音の良いベースができあがりました。

どんなベース?
 オーダーの窓口になった都内某店某氏との綿密な打ち合わせにより、ダンカン製パッシヴ・ピックアップを見送り、レインポー製ピックアップ+プリアンプという仕様に決定(結局またアクティヴかいな…でもそのほうが良いとアドバイスされたからしかたがない)。ボディ形状は定番モデルのエンペラーにしました。オリジナルなのですがどこかジャズベース的で、かつ洗練されていて嫌みのないものです。これを私はアッシュだけでオーダーしました。ただ内心きっとフォデラならアッシュもすこぶる良いのを使ってくれるだろうと思っていました。結果やはりすごいボディがやってきました。それは驚くほど重いアッシュでした。例えるならお寺の鐘のような板です。一応木目はうっすら見えるようブロンドカラーでの塗装にしました。これにべっこう風ピックガードが付き、なかなかフェンダーっぽくなりました。この段階でかなりSOULくさい雰囲気を感じていただけるでしょうか。似た仕様は見たことないですよ、こんな質素なフォデラは。…と、書きましたが、某氏によると、フォデラでは同仕様を3本ぐらいは作ったはずだそうで、その後似たような仕様が中古で出回っていたのを見たことがあります。人気なさそうでした(笑)。ハードウェアはクロームを希望しましたが「ない」ということでゴールドで妥協。ヘッドは無指定なのにバーズアイメイプルの突板貼りで、形状はフォデラでいうリバースでした(一見このほうがノン・リバースに見えるわ)。感動したのは予算的にローズウッドの指板で妥協したにもかかわらず、実際はハカランダが貼られてきたことです!スラブ張りが分厚すぎる!あまりに名より実を選ぶようなオーダーを情けなく思ったのでしょうか?「こんな地味な木ばっかりで作らせやがって、うちをなめんなよ」と思ったに違いありません。最近は同社の銘木の在庫もやや減ってきたとの噂がありますが、当時はまだたんまりあったのでしょう。実はここの細かいオーダーミスはよくあることらしいとか。かえって事細かにこだわりを指定しなかったのが私のは良かったのではないでしょうかとのこと。指板表面はよくある5弦ベースはかなりフラットであることが多いのに、このベースの場合、少し緩くRがついているのでFenderを弾いているような「っぽさ」を感じます。ちなみに弦はステンレスが張られてきました。レギュラースケールで緩めのテンションで張られています。総じて指に優しい弾きごこちです。誰もがこの弾きごこちに驚かれると思います。
 

サウンドは?
 現在レインポーは無くなってしまったピックアップメーカーなので名品扱いされていますが本当にそこまで価値があるなんて知らずのオーダーでした。結果は確かに良かったです。アッシュ特有のすごいワイドレンジながらミッドがしっかりしていて抜ける音が再生しきれてます。ピアノの低音に近いくっきり感がある。特にアンプを通してなお眼前でアンプなしで弾いているように感じる生鳴りのリアリティがすごいです。あざやかなハイミッド〜ハイエンドも美しく、こくのあるローも筆舌に表しがたいのですが、いずれも全く暴れずびしっとフラットなのがすばらしい。多くのハイファイアクティヴはローエンドが強力なことが多いので、場合によりこもったり、ブーミーに広がりすぎたりします。けっこうボーカルとギターに嫌がられるのね。それに比較してレインポーはロー付近は控え目に感じられるほど自然ですから、必要以上に脂肪質にならないのが聴き手にもありがたいです。ここまで上品かつ素直なベースサウンドは初めてでした。パッシヴ・ダンカンがどれほど良いかはわからずじまいでしたが、レインポーにして良かったです。これを私はプリアンプでいじらずフラットなままアウトプットしています。つまりパッシヴトーンのままローインピーダンス化しているつもりです。このサウンドは色気無くストレートに鳴るアンプなどではクリアすぎて低音楽器らしからぬほどです。ハイミッドが強調されているわけでもないのですがフィンガリングやピッキンクによるタッチノイズに気をつけねばなりません。その意味では私はハイファイながら少し色気をつけるタイプのアンプが合っていると感じます。また、ハードロック系やコア系のジャンルではエフェクターなどでローファイ加工しなくてはならないほどです。
 実はそんなエフェクターがあまり相性良くありません。空間系は良くても、ディストーションは苦しいです。歪み系って無駄に低音量が多いほどブーストされて歪みますよね。やはりそこまでのローが足りないのでしょうか。音が良すぎるとかっこよく歪まないなんて経験して初めてわかりましたよ。あまりフォデラで歪んでいるのも似合わないというか…そんなときは私はスペクターがありますから。よって、ある意味、オールマイティではないですね。演奏ジャンルによりその都度奏法面で工夫を要します。大変使いこなし甲斐のあるベースですね。その点、私も早くベースに弾かされないように、人馬一体的に弾けたらなぁと思っています。
 最近のフォデラはローB弦のペグを妙な位置にしたり、ピックアップもAEROにしたり、18vサーキットにしたりと、私が買った頃の楽器とはずいぶん異なりますが、かなり進化しているのでしょうか。特にローBサウンドに関しては通常ペグ配置の頃でも他社5弦ベースに比べくっきりしていると思うのですが、これでまだ不満だという人はどんな強者なのかと恐れ入ってしまいます。

後日談1
 皆様、オーダー品とは出来たてホヤホヤが届きます。つまり調整不足の危険性をはらんでいます。買って半年はめんどうでもマメにリペアマンの微調整を受けましょう。そこをクリアすればその後はあまり手間がかからなくなります。特にネックですね。私も忙しくて、買って数ヶ月後に始めて反りだしたネックをリペアマンに見せたら「あれほど言ったのに」と注意されました。うまくすれば反らないネックに育てることができるのだそうで。そして、その2年後のつい先日、やはりリペアマンに久しぶりに見せに行ったら指板調整&リフレットとの診断結果!念のため書きますが、充分弾きやすいネックでしたが、素人のネック調整は技として限界があるのです。トラスロッド回しは苦手じゃないんですけど、問題はそれが効かない十数フレット以上のハイポジションと1〜3フレットあたりなんですね。実は日本の場合、多湿だけに気を配っていると数年であっさりネック起きしてしまうそうですよ。皆様ご注意ください。でもこの程度は重症じゃないんだとか。リペアマン曰く世の多くのベーシストはこの状態で平気で使っているとか。この人は「どうします?やります?」と一応聞いてくれましたが、良い楽器だから今のうちきちんと治そうよとも言ってました。あぁ6万8千円也。こういうところはサドゥスキーやマイク・ルルなんか予想して作っているらしいのですごいと思いますが、それはつまり始めの数年はむしろ微妙に奇妙なネックであるということなのでしょうか?興味が湧くところです。
 さて、リペアを終えて帰ってきたマイ・フォデラは確かに見事なストレートネックに仕上がってはいますが、指板が修正のために少々削られて薄くなってしまいました。このわずかな薄さをなんと体がわかるもんですね、今までと違うというのが。ネックの握った感じや、フィンガリングのタッチが、もう以前のこいつじゃなくなってしまいました。充分弾きやすいんですけど、なぜか少し後悔しております。これがフィーリングという部分なんでしょうね。

後日談2
 最近、手がなれてきました。というか前のフィーリングを忘れてきたのでしょう。また弾きやすく感じるようになってきましたね。バンドのギタリストに貸したら「こんな弾きやすいベースがあるのか!」と驚いていました。そういうレベルの問題だったようです。今はオリジナル曲の録音に凝っているのですが、録音時のサウンドはあいかわらずすばらしいものがあります。

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