Spector NS-4CR

どんなベース?
 02年製02年入手。私のライヴ用メインです。見た目が派手で、弾きやすく、強力な音がするからです。値段や仕上げが全てじゃないなぁと思わせる貴重な一本。

 行きつけのBBSでお茶の水にすごく綺麗な物があると教えてもらい、実際見に行ったら本当に綺麗で衝動買い。スペクターの魅力は美しさですが、このキルテッドメイプルの「ま緑」のシースルーというのはすごいでしょ?(写真は木目を見せるためやや明るめにレタッチしてあります。実物は藻のような緑です。)

 これは本家US madeではなく、ヨーロッパシリーズというライセンス生産品。チェコ製です。なーんだよと思うなかれ、ぱっと見は本家スペクターとの見分けが付きません。しかし、値段は大変差があり、かなりコストダウンされているはずです。人件費も違うでしょう。
 木材的には、良い楽器を作るのに必要なある程度のクオリティのものは使われていると感じました。US製は高い分、最上級のクオリティで装飾的に美しい木目の銘木のみを仕様していると思います。そんな木材を米国内で仕入れるのはかなりコストアップなはずです。聞いた話では、チェコはびっくりするほど物価や人件費が安いそうで、そうすると定価20万円台というこの値段も全然安くないのがわかります。それ場合、スペクターかディストリビューターが相当儲けを取っていることになりますよね。逆にチェコ製でその定価に見合うコストの木材を使ったとすれば、それこそかなりの高級材ということになるので、私としてはその説を信じたいです。どっちだ?
 肝心の工作技術の違いはおおむねないと私は思いました。どうみてもちゃんと仕上げてあります。既述の本家NS-5と比べても大差ナシと断言します。ヘッドのトレードマークも指板のSイニシャル型パールインレイも全く不満ない出来。チェコは楽器製作の歴史が非常に古く伝統産業であります。エレキベース製作の歴史は古くなさそうですがクラシックからのフィードバックはあると見ました。

 一方、よく見るとわかる明らかなコストダウン点もあります。(表参照)

あと、見えない部分はどうなっちゃっているかわかりません。
US製 チェコ製
ナット 真鍮削り出し製。昔からスペクターはみなそうです。 ダイキャスト(鋳造)製。絶対安いぞ。ブリッジと同じ素材でしょう。金属製ではあるので音色に与える影響は無視できましょう。
ナットの弦溝 丸ヤスリによる手加工でしょう。通常純正弦(ふつうのミディアムライトゲージ)でフィットします。5弦は130でも問題なし。 機械で切ったのではなく初めからの成形段階によるものでしょう。ちょっと粗めで適当な感じ。かなりお粗末。ミディアムゲージでぴったり入りそうなほど、純正弦だと隙間あり。
トラスロッドカバー このプラ素材は本家の場合でもたいして良くない(フォデラはエッチングされた金属製だよ!)のですよ。 輪をかけてちゃっちいです。これはボンドやセメダインのキャップと同じ素材じゃないかな。そこに刷られたブランドロゴのインクもひどい色(黄土色だよ)で刷り方も下手。すごく安いぞこれ。
ジャック プラグによっては緩めです。例えば妙なL字プラグ(鋳造)だと接点不良あり。 タイプは同じですけどコストの安いものでしょうね。でも、きつめで信頼性はむしろ良い。
ボディ形状 最近のUS製(特にJすなわちボルトオンタイプ)はすこ〜し変わってきていますので、ある意味チェコ製と差があるのですが、これはそのUS製がおかしいのです。大げさに言うと角張ってきているというか、なんか丸みが足りない感じ。触る機会があったらお確かめ下さい。同じUS製なのに我がSSD NS-5とも微妙に違うし。 チェコ製のシルエットは我がSSD NS-5すなわち以前のスペクターNS-2のシルエットとはそっくりです。全く不満無し。これだけ似ていれば立派立派。微妙に違うという人もいるが、古いチェコ製はそうだったのかもね。
トラスロッド +ねじ頭で非常に堅いものです。回しにくく、効き位置もヘンだ(ややハイポジ寄りに山があるのでローポジはつねに順反り気味が直らない。そのかわりネック起きはなりにくい。)。スペクターにおいて最も不満な点。 よくある六角ねじ頭で思いの外スムーズ(でもまだ堅めといえる)。これは汎用トラスロッドではないでしょうか。これもコスト安ですね。効き位置はあいかわらずいまいちです。(5mm六角レンチ使用)

 こうみると高級感は差がありそうですが、ちょっと弾く程度じゃわからない違いばかりでしょう。持ってしまえば違和感ないことがお分かりいただけるかと思います。試しにUS製として偽装して売ってもしばらくバレないでしょう。

 ちなみに、チェコ製は02年夏モデルから工場を変更してリモデルしました。アクティヴサーキット(次項参照)とブリッジが変更になっています。ブリッジは同機構ながら艶あり金ぴかで小型になりました。手入れが大変そうだ。

 ただし!ネックの直線精度はリモデルしても未だ難ありと感じます。スペクターのウイークポイントはネック、正確にはフレット&指板精度です。新品をたくさん試奏しましたが、どれも弦高が高く、下げると部分的バズがでそうな感じ。ネックを見るとやはりなんとも特徴的なウエ〜ヴィ〜な反りがほとんどの製品で見受けられます(US製ボルトオンネックのNS-2Jだけは良いネックでした)。そしてフレットを見れば打ち込み方にムラがあるようで、部分的なフレット浮きしているものが多いそうです。私が買った製品も部分的バズがあり、皆様もとりあえず購入後のっけからどこかのリペアショップ(スペクターが苦手な所もあるので注意)でフレット擦りあわせ等をおすすめします。スルーネックはネック交換できません故、最初が肝心で、まず可能なかぎりロッド調整して弦高を好みより下げ気味にして(つまり普段より厳しい条件に合わせた状態で調整してもらうため)、リペアショップに持っていきましょう。

サウンドは?
 この02年製からリモデルし、アクティヴサーキットをAguilar OBP-1(18v仕様ですが9v電池一個使用)に換えました。コントロールは2vol+Treble+Bassになっています。
 で、お店に行くとまだ02年夏までのモデルとUS製も置いてあるのですね。これは当然全部弾かせてもらいますよね。すると意外な結果になりました。

 率直に言いましょう。新チェコ製がずばぬけています!良し悪しは使用ジャンルによりますので決めかねますが、単純に出音がすごいのは圧倒的に新チェコ製です。鳴る鳴る(鳴らん個体もあるが)。ぶりぶりすぎる。ヴォリュームでか。音だけ聞いてどれか持っていけと言われたら迷わず新チェコ製。この音が嫌だという人もいそうな。でも、こんなにパンチがあるベースってあまりないですよ。

 前チェコ製は我がNS-5(US.SSD)と同傾向で、あいかわらずEMGだなという感じ。

 現US製はノンジャンル的に使えそうなハリのあるベースの音がします。さすがEMGという感じ。

 この二つしかなければ、私はチェコ製を買わなかったでしょう。ところが、新チェコ製を弾いたらぶったまげ。久しぶりにすごいベースサウンドを聴きました。まるで濃いしょうゆとんこつに豆板醤を入れたような遠慮ない味付け。しかも硬麺。これがEMGの正体だ!と言っているようで、その羊の皮を剥がしたAguilar OBP-1おそるべしかな!同じ新チェコ製数本を弾き比べましたが音傾向はどれも同じです。つまりもろアクティヴなんです。でも、アクティヴが良い!と感じずにはいられないアクティヴの神髄を拝ませて頂きました。

 さて、Aguilarのすごさはわかりましたが、私のこの緑スペクターはそれ以前に非常に木鳴りが良いことも書かねばなりません。シールドを挿さないアンプラグド状態で弾いたとき、私の所有機の中では唯一エレアコ顔負けの生音が聴けます。これは生産国や作りの良さとか値段云々じゃなくて偶発的個体差です。あのデカボディでスゴ木材製のフォデラより、小型メイプル製という構造上ボディ鳴りの大きさを期待できないはずのスペクターの方が生音が大きいんですから。それまでは'72年のブロンドのプレベが木鳴りチャンピオンだったのですがもう陥落です。今後のベースを買う際に、生音での木鳴りチェック時の基準になりました。(するとなかなか買えるベースがなくなってしまいましたが)

追伸1 03年にもサーキットは変更しています。毎年リモデルするみたいね。

追伸2 03年10月吉日、お嫁に行きました。幸せになるんだよ…。

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