個人的愛用コンプの一例

dbx MC6

 製造中止になって久しいコンプです。売れなかったんでしょう。しかし買っておくべき品でした。dbxならラック型の160系が有名ですが、このMC6は廉価コンパクト版。ベース用というわけでもないのですが、見事にベースにはまるサウンドが出ます。ラック型同様、オーディエンスにはあってもなくてもわからないタイプではありますが、弾いている者にとってこの意味不明な安心感はなんなのでしょうか?

まぁごらんくださいな。プラ筐体ですよ(笑)。軽すぎてシールドにひっぱられて動くはずです。固定方法は考えてください。そして付属の専用ACアダプターが必要です。MC6はなんと半端な9.75V!なんと大食いの単品820mA!!このすさまじい電源のおかげで目にも楽しい3色LEDワールド(萌)と安定した広いヘッドルームが手に入るのです。アクティヴフルテンでも歪みとは無縁。音やせもまったくありません。ノイズも皆無でレコーディングに充分使えると思います。あの値段で非常に優秀だと思います。しかも米国製です。

コントロールはスライドバータイプで見るからにちゃちですね。ホコリ入りそうで怖いです(笑)。それでも項目はかなり本格的だと言えます。上部のLEDメーターと、右上のABOVE & BELOWインジケーターのおかげで、的確なセッティングを苦もなく決めることができるでしょう。しかし、もっとも驚くべきことは右上のOVEREASYボタンです。このページで以前まで私は「これを押すとオートになります!(きっぱり)」みたいな乱暴な書き方をしておりましたが、正しくはコンプレッションカーブのニーの部分をうまいぐあいにどーたらこーたら…(略)という機能なのでオートと言い切るのは問題がありましょう。しかしそんな理屈は知る必要もなく実際に私が押しちゃった印象は「結果的にdbxが勝手に巧くコンプレッションカーブをこさえてくれる」ような作用です。これをオートマチックと呼ばないでなんと言う!この半端ではない巧すぎる処理はコンパクトコンプ史上先にも後にも例がなくむしろ正真正銘の自動設定と呼んで褒め称えたいすごいボタンです。とりあえず押しちゃえば細かい設定は不要で不満なく使うことができるでしょう。私の周りのMC6オーナーズによると、いろいろセッティングしてみた末に、結局全部センターでOVEREASYをONの音が一番良かったという話をよく聞きます。その音とは…最後に書きますね。
そして音だけの話では済まないのがこのボタンのすごいところ。繰り返しますが理屈はどうでもよいです。OVEREASYの状態は、下手な演奏さえ上手く換えてくれるのです。タッチのムラがある人には魔法のボタンとなるでしょう。私もいろいろなコンパクトコンプを触ってきましたが、へたれ改善効果はこのMC6に勝る機種はないと断言します。(その意味でもラック型に近い製品なのですな)

よく見ればいわゆるフットスイッチはありません(別売りのバイパス用フットスイッチを繋ぐことはできるようです)。オン・オフはどうするのだ?いやいや、これは常時かけっぱなしにする使い方で正しいのです。そのかわり、音が妙に変わってしまうようなことはありませんので、信頼しきって通しましょう。ちなみに右下に一応バイパスという名のボタンがありますが、トゥルーバイパスなわけではありません。バイパスしない音があまりにすばらしいのでバイパスしたとたんがっかりします。

…昔のカセットデッキを使ったことがあるでしょうか?(あぁなつかしい)それにはレベル調整コントロールというものがついていました。あるいはオートの製品もありましたね。レベルが高すぎると、曲間のあるドでかいフロアタム一発が歪んでしまったりしましたよね。だからといって下げすぎると全体が小さな音で録れてしまいます。録音するときに誰もが念入りにレベル調整をしたはず。まさに手動リミッターでした。オートの場合はまさにコンプそのものなのでした。で、そこらの楽器用コンプはレベルを抑えるついでに音が変わりますが、カセットデッキのレベル調整で音が変わるなんてことはなかったでしょう?例えるならMC6はカセットデッキ(ラジカセのじゃないよ)のオートレベル調整のようなコンプなのです。ピークのオーバーした瞬間音=ABOVEを、純粋に音量のみBELOWまで下げる働きをひたすらこなす機器なのです。実にまじめです。

しかし、通常、音が全く変わらないコンプ(特にリミッターに多い)というのは面白みに欠けるものです。dbxは流石にそのことをよくわかっていて、いつもdbx特有の超微妙な音の持ち上げ感を加味してくれます。これはOVEREASYのON/OFFとは関係なく、アタックのコンプレッションスタイルに秘密があるように私は感じます。コンプは大きな音を下げる大きな仕事の一方で、小さな音は上げる小さな仕事もあり、それがアタックの強調要因の一つとなります。つまり原音に比べどこかが少しだけ上がる場合があるのです。どこが上がるかは個性の素になります。Demeterのようにピーク以外の硬いアタック音すべてがタイトに強調されるスタイルでもなく、ANALOG.MANのJUICERのように鋭利なエッジのみが薄く切れ上がるスタイルでもなく…、アタックのロー〜ローミッド成分がもこっと立つような感じになるのです(なんじゃいそりゃ)。なぜだか説明するのは難しいのですが、その結果、ベースとして色艶があって、しっとりして、まとまりがあって、前にボンと出るような、不思議な魅力的な音になります。使っている誰もがわかっていることだと思います。この小さな安物dbxにもそれがちゃんとあるのは絶賛すべきことです。料理で言えば盛りつけみたいなもので、味はかわらないけど、感動の差は大きいのです。あるいは、親と同居している新婚の新妻の肉ジャガがある日急に美味くなったとき、気付かれないよう母親がこっそり調味を足していることがあるのです。それかー?!。


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