個人的愛用コンプの一例

FLIP BC-X

 FLIP BC-Xはコンシューマー向け(?)量産エフェクター作りにおいて日本が誇る"Guyatone"ブランドの東京サウンド社の製品。同社はボトムゾーン対象の良心的物作りが特徴ですが、たまに上級向けのこだわり製品もリリースしています。これはそんな一例で、真空管を使ったシリーズのひとつ、"FLIP"というブランド名で販売されていたベース専用コンプ。今も生産されているかわかりません。

 まず写真をごらんください。せっかく真空管が見えているのに、デザインがいまいちです。特に"COMPRESSOR"の書体はやっちゃった状態。実にGuyatoneらしい。おっと、こんなことで本機をナメてはいけません。これは名より実を取るような製品です。

 ノブが5つありますが、COMP.、ATTACK、LEVELはごくあたりまえの効きをします。ただこれだけだと潰しコンプでしかありません。で、キモはなんといってもSHAPEとFREQ./LEVEL。この2つはふつうのコンプにはありません。

 SHAPEはコンプをかけて鼻づまり声みたいになったサウンドを原音風に戻すような効果を発揮します。この製品だけのオリジナル機能で、この製品のキモです。これにより、しっかりコンプがかかっているにもかかわらずまるでかかっていないような瑞々しいサウンドになります。ごまかしではなくちゃんとダイナミクスも生きてます。それじゃ結局コンプかかっていないんじゃないの?とも思えましょうが、よく聴くと良い意味で原音とは違うのがわかります。コンプではない音響機器におけるナチュラルなチューブコンプレッションされたようなサウンドに近いです。その仕組みはわからずともとにかく素敵すぎます。

 一方、FREQ./LEVELはミドルだけのパライコです。これはすごくおいしい効き方をします。まず単にプリアンプ的に音に特徴が出せます。あと、Qが狭めなようで、いらない音を減らす使い方もできます。たとえば、私の大嫌いなフィンガー&フレットノイズだけ目立たなくすることもできるので便利です。ちょうど耳障りな特有のノイズ(次参照)の周波数に近いので、私の場合、3時ぐらいの高いFREQ.をフルカットしています。ベースにとってなくてもあまり困らない音域ですから、やせた音にはなりません。

 ノイズですが、上記の他に真空管使用コンプという宿命程度の「じー…」というノイズがあります。が、少ない方です。もちろんCOMP.とFREQ./LEVEL次第でかなりノイズはコントロールできますが、エフェクターと割り切って使う場合は、部分使用するなら微々たるノイズがあっても問題ないと私はみます。根本的にレコーディングでは目立たなくても不評だと思います。でも宅録では充分使えるノイズレベルだと思います。ライヴとか実演用に使う分には全く問題ありません。EBS MULTICOMPのACアダプター使用時のような「ムー!」といったハムノイズとは違いますからね。常時使用も可能なコンプですがこの場合はセッティングをほどほどにせざるを得ません。

 歪みですが、ベース本体のアクティヴイコライザーをフルテンにしてもかなり少ないです。ここが実にありがたい。ここで不合格になる製品がやたら多いのです。世のコンパクトコンプのほとんどがこの点に問題があります。こいつはベースでせっかく重低音が出ているのにコンプから先にそのワイドレンジが抜けず、ローがブーブーいう、なんてことがない。つまりブーストに影響されにくいんです。すごいことです。上出来です。すばらしすぎる。(ローB弦では歪むことあり。)

 ウイークポイントは電源でしょう。当然電池は使えません。DC12VのACアダプターが付属しています。9VのACアダプターからサプライできないので、コンセントをひとつ確保しなければなりません。

 総じて、原音を損ねずに圧縮できて、真空管らしい色気が乗り、ローも鳴らせて、ミドルで表情も変えられて、なんなら常時かけっぱなしも可能、…これはなかなか出来ないことです。誰も使っていないけど本当はすごく優秀な製品です。中古で見かけたら安いはずなので即買いして結構です。

 そんなこんなで、目下我が最愛のひとつでありますよ。


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