個人的愛用コンプの一例

K&R GrooveComp

 K&Rは、既に自作エフェクター好きの間ではつとに名をはせる「ひよこ」さんのサイトに併設されている、エフェクターの販売ブランドです。いくらその世界では有名とはいえ、世間的にはマイナーなブランドと申してもしかたないでしょう。インターネットにはこのような手作りエフェクターを個人レベルに近い規模で製作販売しているサイトがいくつもあるのです。そしてその多くは量産企業製品にはありえないような理想を追求したクオリティ&パフォーマンスを誇っています。このコンプもそんなひとつ。はっきりいって内緒にしたくもあり広めたくもあり…とにかく非常にすばらしい製品です。


(写真がテカってるぞい。角によけいなもんが写ってるぞい。)

 まず、外観ですが、これだけは別段かっこいい品ではありません。大きさはやや大きめの部類に入るでしょうが、現代のハンドメイド系にしては比較的コンパクトな方だと思います。おなじみの無塗装アルミダイキャストケースにラベルだけという工夫のない外観ですが、今となってはこんな外装も見慣れてきましたね。ノブのセレクトも今やおなじみな感じです。ノブは全てもう少し小型の方が好みですし、筐体もかっこいい塗装が理想ではあります。が、外観は本質ではないので中味がよいとどうでもよくなります。なんなら自分で塗っても面白いでしょう。その肝心の中味は適材適所に最高のパーツを用いて丁寧に作られているようです。私が感心したことは、フットスイッチのクリック感やノブのトルク感が硬すぎず柔らかすぎず非常に適度であることです。

 そのノブはありがたいことに3つしかありません。LEVEL,SUSTAIN,ATTACKのみという簡単な操作系。特にATTACKノブがひとつあるだけで複雑な操作を避けつつお好みにも対応できる最低限の調整ができることは非常にありがたい設計だと思います。2ノブの操作系で済めば越したことはありませんが、時にアタック調節だけはいじりたい贅沢な欲求もあるからです。使い方は根本的には2ノブものと同じです。SUSTAINでかかり具合を決め、LEVELでバイパスと音量を揃えるだけです。その後でも先でも必要ならATTACKで好みの味にするのは自由です。ATTACKノブは繊細なコントロールができ、大胆な変化をしないうえに、センターで中庸な感じでしたからまさに良い設計です。使い方は以上で、思えば上級機種によくあるリリースの調整がありませんが、問題はありません。なぜならリリース後の盛り返し(ディケイ)が激しい機種にこそそれは必要だからです。つまり、リリース後の原音復帰が驚くほどなめらかで自然だから必要ないのです。それならば気を遣うノブは1つでも少ない方が易しいですよね。

 音色の色づけはあまりないタイプで、立派な原音重視型だと思います。一言で言えば柔らかみのあるコンプ。良い意味で柔らかなんです。きつめにかけても効果音的にぶっ潰すことなく、素直に音量のとんがり部分にのみ作用します。驚くべき事にベースのファットな音域もほとんど犠牲にしません。かといって、原音重視型に多いバッファーっぽい太い音になったり、逆に味も素っ気も無い冷たく色気のないクリアな音だったり、エンハンサーがかかったような輪郭強調音になったり、ローがタイトすぎたり…etcがいずれもありません。ありがちな抽象表現で恐縮ですが、原音に対し少し艶っぽさが乗るような感じがあるので、生き生きとした感じがあり実に音楽的だと思います。実はよくよく聴けばいわゆる「パリッ」としたハイエンドのアタックの処理音タイプだとわかります。まるでKeeleyをめちゃくちゃ薄くほんのりさせたような控えめながら核心を突いたようなアタックニュアンスが特徴です。しかしKeeleyの持つギターには喜ばれるあの硬さが全くない。ハリがあっても柔らかく感じるのです。どうやら高域の方が圧縮感があり、低域はまるでコンプを通していないような感じに近い味付けだからだと思います。4弦を叩いても鳴り初めのムッとした音圧がちゃんと出ます。誤解しないで欲しいのは、低音にもコンプはしっかりかかっています。低音の過剰な入力に対しては純粋に音量のみ抑えられます。これだと、無くても良いとは思わないでしょうね。常にかけっぱなしであったほうが良いほど。とにかく、ベースのサウンドを素直に生かしたい人や、コンプを使いたくない人などにはすばらしいコンパクトコンプだと思います。

 しかもノイズが非常に少ないです 。ヒスノイズはフルテンでは相当にわかりますが、実際コンプをフルテンにする人います?常識的な通常使用では録音用途でも全く問題ないレベルです。ハムは防止策としてパワーサプライの併用をメーカーではすすめていますが、実際は安物ACアダプターでもハムは発生しません。見事。

 歪みにも強いようです。アクティヴベースの2バンドイコライザーフルテンぐらいは歪まずに受けとめるヘッドルームがあります。3バンドだと、ミッドとベース双方のフルテンはさすがにクリップっぽく歪んでしまいましたが、そこまでされることはあまりないと思うので、事実上問題ないと思います。というか、他のどのコンパクトコンプよりもマシな方だと断言します。入力ゲイン調節もなしにこの余裕はすごく良心的な設計だと思います。

 そんなこんなで、FLIPを追い抜いて目下我が最愛のひとつであります。原音重視派のかたにはおすすめします。


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